2011年06月26日

トレーサビリティー

新聞の見出しに「米トレーサビリティー法」というのがあった。中身を読むまでは、アメリカで何かを追跡する法律ができたのかと思った。中身を読んで、もしこれが法律の名前なら、日本国の政府や議員たちは狂ったと思った。

はじめて「米トレーサビリティー法」という言葉を耳にし、あるいは目にして、いったいどれだけの人が正確に理解するだろうか。英語はそれなりに学んできた私でもカタカナ語のトレーサビリティの解釈に手間取ったのだから。trace「トレース」はトレーシングペーパーなどで入った語で、地図などで道をなぞっていく等の意味。-able「アブル」は接尾辞で「可能な」、-ity「イティ」も同じく接尾辞で主として抽象名詞を作る。2つの接尾辞が結びついたのが ability「アビリティ」だ。これらが組み合わされた語が traceability「トレーサビリティ」だ。日本語に置き換えたら、追尾(または追跡)可能性だろうか。生産情報表示としても大差ないだろう。「米トレーサビリティー法」は、米がどこで誰によって生産されたかを追尾可能ならしめるための法律と解釈した。

こういう外来語の馬鹿げた使い方では、「『地下バウンダリー』プレスについて」という見出しも同類だ。これには、わざわざ「地下ダム」と日本語を添えてある。地下ダムで十分理解できるのに、なぜ地下バウンダリーと言わねばならないのか。

この場合「プレス」も広義で分かりにくい。プリント姉妹語で、もとはラテン語で原義は「押す」。活字を押すことから「印刷する」に、印刷物から「新聞(関係者)」に、「コーヒープレス」では、コーヒーを圧力をかけて抽出することからで、エスプレッソは、イタリア語だが、「外に押す」つまり押し出して抽出することに他ならない。では、ここでは何を意味しているのだろうか。本文を読まなかったので当てずっぽうだが、地中に堰を押し込んで、汚染水が境界の外に漏れ出さないようにすることかもしれない。

ともかく分からない、あるいは分かりにくい、いか様にも誤解されうる言葉だ。理解できないこと、誤解することを目的にするカタカナ語なら、直ちに廃止すべきだ。適当な日本語を考えるのが面倒だと言うなら、名称を公募したらいい。






posted by シャノワール at 23:28| Comment(0) | 外来語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月22日

ほぼ

「環境にほぼ影響ない」というのは、おおむね、およそのところ、全くとは言えないが、ほとんど環境への影響はないだろうという意味だろうか。「ほぼ」と「ほとんど」の違いははっきりしないが、少なくとも「全く」でないことはたしかだ。

原発事故の初期段階では、「直ちに健康への影響はない」という言い方をした。この表現がインチキであることは、度重なる避難区域の拡大で明らかになったが、「ほぼ影響ない」ことが同じようにインチキであることは、今後の展開を待たずとも、事実上大気中に放射性物質を放出しているのだから、明白である。

国も東電も、こういうごまかし発表で国民を騙しきれると考えているのだろうか。既に多くの国民に苦難の避難生活を強い、遠く離れた地域の親たちに子供への影響を心配させ、周辺の農地や漁場を損ない、農水産物などを廃棄させ、被害地に残された家畜やペットを死に追いやりながらも、「直ちに」「ほぼ」と曖昧な発表で国民を欺瞞するのは止めて欲しい。自分たちが選んだ政治家を信頼できなくなっただけでも、国民は不幸なのだから。



posted by シャノワール at 21:40| Comment(0) | 虚偽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月21日

パナソニック

外国語を店や会社の名前に使う場合、しっかりした知識があって、かつそうすべき理由や根拠があれば、それはそれでよい。松下電器と松下を名乗るグループの会社名をパナソニックとするには、それなりの苦渋の決断だったと推察する。しかしナショナルではなく、同社の高級音響製品に限って使われていた商品名を選択したのは、製品と意味の違いが大きく、誤った決断だった。

パナソニックのパナは、ギリシャ語パンの連結形と思われる。パンドラ「全てを与える」、パンナム「全アメリカ」のパンは「全て」を意味する。ソニックはラテン語の「音」の形容詞で、スーパーソニックなら超音速だ。パナソニックと初めて聞いた欧米人は「全ての音の」と理解し、これは音響関係の会社だと判断する。つまり音とは異なった分野の電気製品は、専門外だと誤解されても仕方がない。

Quattro Angelo in the Garden という店名のレストランがある。Quattro と Angelo はイタリア語で、「4」と「天使」の意味だ。in the Garden は英語で、「庭に」の意味だから、好意的に解釈すれば、「庭に四天使のいるリストランテ」ということになろう。がしかし、イタリア語と英語のチャンポンも妙だが、もっと可笑しいのは「4人で1人の天使」だ。パナソニックを音響専門の会社と誤解するように、この店の主や料理人は、本場で修行したような顔をしているが、イタリアでもアメリカやイギリスでも修行していないと断定される。

「名は体を表す」という言い習わしがあった。会社や店の名前をおいそれと変えるわけには行くまいが、いざ変えようというとき、間違っても、誤解を与えるような名前をつけるべきではない。



posted by シャノワール at 22:01| Comment(0) | 固有名詞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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